グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ふるさとトピックス

Step By Step vol.24

時間に追われてなんぼ!

モットーは“遊び心”と“自分らしさ”


 幼い頃から水泳を続けてきた伊東さん。最初に勤めたスイミングスクールで出会った、障がいがあるお子さんとそのお母さんとの出会いをきっかけに、障がいがある子どもにマンツーマンで水泳を教えて25年になる。長年通ってくれる子どもが多いため、長い付き合いになることも多い。泳ぎの成長はもちろん、心と身体の成長を側で見守る伊東さんにお話を伺いました。

【On Time】 モットーは“遊び心”と“自分らしさ”

現在のお仕事について教えてください

 自閉症、知的障がいなどがある子どもたちにマンツーマンで水泳を教えています。現在は小学1年生から25歳までの20人程の生徒を持ち、一人45分のレッスンを行っています。自分の言葉で意見を伝えることが難しくても、コミュニケーションは取れる子が多いです。
 プールに入ることで皮膚を刺激し、リハビリ効果を得ることができます。しかし、それ以上に45分のプールに入る時間が、子どもにとって「心の解放の時間」になることを目指しています。子どもたちが上手く発散できないストレスを、プールに入ってスッキリさせられるように、一人ひとりに合ったメニューを考えています。

どのような経緯でこの仕事を始めたのですか

 私自身も幼い頃から水泳を習い、19歳の時にスイミングスクールに勤め始めました。当時このスイミングスクールに通っていた教え子のお母さんから、兄弟にも習わせたいと相談されました。しかし、その子は難治性痙攣という脳に障がいがあるお子さんでした。当然、障がいがある子どもに水泳を教えたこともなく、知識もありませんでした。その時に、お母さんに誘われて、水泳療育を専門としている池田君子先生の講演会に参加しました。池田先生との出会いが、この道に進むきっかけとなりました。
 先生の話に刺激を受け、22歳で先生の元で勉強するため2年近く茨城まで行きました。発達支援についての講演会、研修会、障がい者施設での保育補助や水泳指導など、先生と行動を共にして、直接見て、聞いて、実践的な勉強をしました。
 その後、静岡に戻り独立。障がい児水泳指導、一般水泳指導を行う、水泳サークル『Water Kids』を始めました。そして、28歳で社会福祉全般を学ぶために静岡県立短大に入学しました。当時は学校に通いながら、週末に水泳を教える生活を送っていました。

指導を始める前と後で、考えていたことのギャップはありましたか

 指導を始める前は、私の勝手な先入観で“これはできないだろう”、“あれは難しいかな”など、決めつけてしまっていた部分がありました。しかし、これは大きな間違いで、子どもと相談しながらゆっくりレッスンを進めていくと、できないと思い込んでいたことも、クリアできることが多々あることに気付かされました。できないと決めつけるのではなく、進め方を工夫し、やり方を変えれば何でもできる。この時に私一人で決めるのではなく、子どもやお母さんを巻き込んで、相談して進めることも、取組みに対して前向きな気持ちにさせる方法であり、泳ぎの習得への一歩だということを学びました。

指導を始めて伊東さん自身が変わったことはありますか

 “できないことはない”ということです。これは子どもに対しても自分自身に対しても言えることです。取組み方法の工夫次第で可能性はいくらでも広がります。最初から無理だとあきらめたり、決めつけるのはもったいないと気づくようになりました。
 また、“共に喜べる幸せ”を感じることが多くなりました。子どもたちが何か1つできるようになるのには、時間が掛かることが多いです。その分、できるようになった時の喜びも大きいです。子どもとお母さんと、みんなで抱き合って喜ぶこともたくさんあります。そんな素敵な瞬間に立ち会い、喜びを共有させてもらえることに幸せを感じます。

仕事上での苦労や悩みはありますか

 子どもが思春期を迎えると、対応に苦労することもあります。何をやっても、何を言ってもおもしろくない、そんな多感な時期を迎えたら、お母さん達と相談して、見守ることが多くなります。
 中には、なかなか目を合わせてくれなかったり、信頼関係を築くのに時間が掛かることもあります。思うように子どもとコミュニケーションが取れず、めげそうになることもあるのが本音です。

悩みを抱えた時の解決方法は

 同じ仕事をしている先輩方に悩みを聞いてもらい、アドバイスをもらうことが多いです。溜め込むことはほとんどありません。多くの悩みは先輩方からのアドバイスで解決しています。相談できる人が周りにいることは本当にありがたいです。同じ仕事をする仲間がいなかったら、続けられなかったかもしれません。

指導を始めてうれしかった出来事はありますか

 いろいろな性格の子がいるため、中には心を開いてくれるまでに2~3年かかる子どももいます。この期間、子どもとどのくらいの距離感を保てばよいのか、非常に悩むところではありますが、そんな子どもが目を合わせてくれるようになったり、向き合ってくれるようになった時は本当にうれしいです。
 “夕佳先生大好き!”、と駆け寄ってきてくれたり、レッスン後に“気持ちよかった!”“スッキリした!”と言って帰っていく子どもたちの姿を見ると、この仕事をしていてよかったという気持ちになります。

今後の目標はありますか

 私が水泳を教える目的は「大人になった時に余暇として水泳を楽しめるようにすること」です。今は家族と一緒にプールに来る子がほとんどですが、将来、誰かと一緒に、自由に泳ぎに来てほしいと願っています。そのためにも、プールに入ること、泳ぐことが楽しいと思ってもらえるような、一人ひとりに合わせたレッスンをしていきたいと思います。
 もう1つは、この仕事を始めた時から続けている、子どものお母さんとの連絡ノートならぬ、『交換日記』です。このノートには水泳に関すること以外もたくさんのことを綴っています。子どもたちの成長記録です。この『交換日記』はずっと続けていけたらいいなと思っています。

仕事と家庭の両立について教えてください

 今は、水泳の仕事と並行して、自宅でリンパマッサージのサロンを行っています。始めたきっかけは、水泳に通う子どもを持つお母さん達を元気にしたいという思いから、資格を取ってサロンを始めました。午前から水泳のレッスンが始まるまでの時間で施術を行い、15時以降の時間から水泳のレッスンになります。そのため、朝のうちに夕飯の支度まで済ませます。
私には10歳になる娘がいますが、娘も私の仕事を理解し、家事も進んで手伝ってくれるため、本当に助かっています。
私は出産後半年で水泳の仕事に復帰しました。周囲の支えがあったからこそできたことです。しかし娘が幼稚園に通い始めると、家に帰っても私がいない、自分でない他の子どもと接している私に嫉妬する時期もありました。寂しい思いをさせてしまったと反省することもありましたが、頼もしく育ってくれていると思います。
 主人は老人福祉関係の仕事をしているため、“福祉”というくくりの中では共通する話題も多いです。仕事の悩みを主人にして、アドバイスをもらうこともあります。休みの日には、主人や娘も水泳のボランティアなどに一緒に参加してくれることもあり、仕事をする私の姿も見てもらっています。

【Off Time】 朝早い時間を有効に!

気分転換の方法を教えてください

 仕事が趣味という感じもありますが、やはり身体を動かすことが好きです。娘と一緒に泳ぐことも楽しいです。朝5時のウォーキングも長く続けています。冬は真っ暗の中、歩き始め、陽が昇る頃に家に戻ります。本当に気持ちが良いです。
 また、休みの日にがっつり掃除をすることも気分転換になります。平日にできない分、休日は朝早くから掃除に取りかかります。

日頃大切にしていることはありますか

 “感謝の気持ちを忘れないように”と、“常に相手の気持ちに立つこと”、この気持ちを大事にしています。今の私がいるのも、今まで関わってきた大勢の方のおかげです。一人の人との出会いが、新たな出会いに繋がることも多いと感じます。今の私のネットワークはそんな出会いがつないでくれた大事な糸です。これからも大切にしていきたいと思います。

プロフィール

伊東 夕佳 (いとう ゆか)

島田市出身

サロンと水泳指導、朝からパワフルに活動する。
時間に追われているくらいの方が自分には合っていると話してくれた伊東さん。
10歳の娘さんと一緒に泳ぐことが楽しみな時間のひとつ。

                (取材日 H28.5.24)