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ふるさとトピックス

Step By Step vol.21

人生のテーマは表現すること

『こんな物があんな物に生まれ変わります!』


 平日は看板の制作会社で働き、週に1回、外部講師として特別支援学校で美術を教え、そして合間の時間を使って「流木作家」として制作活動をしている髙田さん。ご夫婦ともに美大出身で、『織』を専攻していたという。ご主人は現在、看護師として忙しい毎日を送っているが、制作活動は夫婦二人で行っている。流木や廃材を使ったものづくりを通して、ものを大切にすること、表現することの楽しさを伝えたいと話す髙田さんの日常に迫ります。

【On Time】 朽ちていく物を生かし、表現する楽しさを伝えたい

現在、どのような製作活動を行っていますか?

 美術家 ゝ~シルス~という「流木作家」として活動を始めたのは、ここ3年です。海に流れ着いた流木、道端に落ちているもの(廃材)、手に取らなければそこで朽ちていくものを拾い、使って、新たな“何か”として生まれ変わらせる「ものづくり」をしています。

なぜ“流木”や“廃材”だったのですか?

 学生の頃から海に行けば流木を拾い、道を歩けば錆びた廃材を拾い、その姿に魅せられていました。流木は川から海に流れ、荒波を越えて再び陸に辿り着きます。荒波を越えてきた流木は角が削れ、丸みを帯び、深みがあります。廃材は必要とされなくなったものかもしれません。しかし、身にまとった錆びはとても美しいです。その佇まいは魅力的で、「まだできる!」と声を発しているようにも思えます。
 また、祖父からの教えも影響しています。私は幼い頃から祖父が大好きでしたが、その祖父に唯一叱られたことが物を粗末にした時でした。そのため、外食時には最初から食べられる分だけにする、広告の裏面をメモ用紙として再利用するということは祖父に教わり、今なお続けています。「ゝ~シルス~」という名前は、大好きな祖父の名前をもらいました。

作品作りでこだわっていることは何ですか?

 あえてテーマは決めていません。現在も鳥、猫、人など様々なものを作っています。最近はお客様の要望でお雛様やこいのぼりといった季節ものを作りました。「作ってほしい!見てみたい!」というお客様の声に応えられるように、幅広い作品作りを心掛けています。
 使う木を決め、描く顔が決まると完成までは早いのですが、なかなか決まらない時は木を眺めながら、1体を仕上げるのに1ヵ月ほど掛かることもあります。作業は主人と二人で意見を出し合いながら行っています。

どのような想いを込めて制作していますか?

 流木も廃材も、誰も手に取らなければそこで朽ちていきますが、手を加えることによって、新しいものに生まれ変わります。制作過程で「これはこうなるべきものだったのではないか!」と思うこともしばしばあります。出来上がる作品は一つとして同じものはありません。一期一会の出会いを大切に、心を込めて制作しています。
 お客様が作品を選ばれる時、「この顔がうちの子供に似ているんだよ」、「この子が私を呼んでる!」というように、思い入れを抱いてくださるのがとても嬉しいです。それぞれの作品が、巡り合った方々の生活の中で息づき、目にした時にフッと力が抜けるような、そんな癒しの存在になりますように…との想いで制作しています。

どのような場所でお客様に作品を見てもらっていますか?

 飲食店や雑貨店に置かせてもらっています。また、作品を気に入ってくれた他の雑貨店の方が連絡を下さり、置いてくれることもあります。
 また、2ヶ月に一度のペースでイベントに参加しています。個展やグループ展も開催します。イベントではワークショップを行うこともあり、お客様に流木を使った作品作りを体験してもらっています。たくさんの方に作品を見てもらい、触れてもらえる機会を作りたいと思っています。

制作の傍ら、特別支援学校で美術の授業も担当しているのですね

 中学生の頃、いろいろなことで悩んだ時期に重度の障がい児施設を訪ねる機会があり、ひたむきに生きることの大切さを学びました。この経験から、福祉・教育の分野に興味を持ちました。
 そして東京の美術大学卒業後は地元の愛知県に戻り、子供たちに「表現することの楽しさを伝えたい」と、特別支援学校の美術教員として勤務しました。「上手く描けないから美術は苦手」と言う生徒に、どうしたら表現する楽しさを伝えられるのか、模索する日々でした。行き着いたのは、技術を教えることよりも、一緒に感動して楽しむこと。「何これ?!」、「おもしろい!」、「もっとやってみたい!」と、思ってもらえる題材を探し、授業で子供たちが解き放たれた表情で取組む姿を見ると、美術の素晴らしさを感じます。「美術って楽しい!」、「好きになった!」という、この言葉を子供たちから聞けるので、辞められません。

一度現場を離れ、再び支援学校で美術を担当しようと思った理由は何ですか?

 静岡に嫁いでからも、支援学校で教えるつもりでいましたが、妊娠、出産、子育てと続き、また子供の体が弱かったこともあり、働くのが厳しい状態でした。思い通りにならないことばかりで他を責め、自分を責め、気持ちが暗くなることもありました。そんな時に、昔訪ねた施設の方々や、支援学校で出会った明るく、前向きに頑張るお母さん方の姿を思い出しました。自分にないものを並べて悲観する私は、今あるものへの感謝を忘れてしまっていました。周囲と比べて落ち込んでいたら、目の前にいる子供の良いところが見えなくなってしまう、これではいけないと気づきました。支援学校は、自分の気持ちの持ち方で、見える景色が変わることを教えてくれた場所、子育てが落ち着いたら、いつか戻りたい場所でした。
 常勤講師として復帰しましたが、家庭との両立は難しく、現在は週1回の外部講師をしています。子供たちが夢中になって作品作りに取組む姿はキラキラしています。また、子供たちの表現方法に驚かされることもたくさんあります。子供たちの豊かな表現をさらに広げていけたらいいなと思っていたので、今は授業がとても楽しいです。

仕事と子育ての両立について教えて下さい

 体が弱かった息子たちも成長し、少しずつ手は掛からなくなりましたが、その分、気に掛けるようにしています。また、子供のちょっとした変化に気づき、フォローできるように、自分の気持ちに余裕を持つようにしています。仕事でも子育てでも、何か壁にぶつかった時は、直面している問題にきちんと向き合って、1つひとつ解決していくことで、私自身が成長させてもらっています。今取れるバランスがベストであり、日々変化するバランスに柔軟に対応できるようになりたいと思っています。

【Off Time】 家族のありがたみを感じる日々

気分転換の方法を教えて下さい

 “海”や“山”といった広大な場所に行きたくなります。私は相手がどのようなものを見て感動するのかを知りたいと思うので、好きなこと、好きなものが共通している主人と一緒に出掛けることが多いです。自然に触れると気持ちがスッキリします。

日頃大切にしていることは?

 家族との“食事の時間”を大切にしています。食事を作って食べてくれる人がいることは幸せなことです。息子たちも家を離れる時がきっときます。主人も看護師という職種上、家族そろって食事が取れる時ばかりではないので、だからこそ全員がそろえる時には家族団欒の時間を大切にしています。

My First Step ~私に人生の新たな一歩を与えてくれた人~

 主人、祖父、自分の両親、そして主人の両親です。
 身近な人たちに支えてもらってここまでやってくることができました。皆、私のやりたいことを常に応援してくれて、次のステップに進む時には心強い一言をくれます。
 また、主人が私の喜怒哀楽を受け止めてくれるので、いろいろな場面で助けられ、感謝しています。

プロフィール

髙田 慶子 (たかだ けいこ)

愛知県出身。

東京の美術大学卒業後、地元愛知県に戻り、特別支援学校の美術教員として赴任。
在学時代にご主人と出会い、結婚を機に静岡に来ました。
現在は、流木作家として、支援学校の美術講師として、そして妻、母として
フル回転の毎日を過ごしています!
                         (取材日 H28.2.2)