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ふるさとトピックス

Step By Step
vol.7

地域を守り、伝統、文化を受け継いでいきたい。

『あなたが大切にしたいものは何ですか?』


 農業を営む家で生まれ育った杵塚さんは、地元の高校を卒業後、アメリカに留学し、カウンセラーを目指します。しかし、カウンセリングの先進国と言われるアメリカで勉強をしてみると、そこには想像と異なる世界がありました。一時帰国した日本で農業の可能性に気付き、現在は両親、夫、妹、弟とともに「人と自然を繋ぎたい」という想いを胸に仕事をしている杵塚さんの日常に迫ります。

【On Time】 人の心を元気にしたい。

「人と自然を繋ぐ」というのは、具体的にはどのような取組みですか?

 人は自然の一部であるということ、それを体験や交流を通して感じていただき伝えていくことで、人がもっと人間らしく生きる道があると思います。現代社会において、人が自然から離れ、農村が過疎化していく中、若い人が少しでもこの地に集まり、地域が元気になったらいいなと思い、農業体験を混じえた交流会を開催しています。
 交流会では農業に関心のある人が集まり、紅茶、お米、小麦、味噌等を皆で作ることによって、地域の多様性を味覚の面からも楽しんでいます。人が生きていく上で切っても切り離せない「食」というカテゴリーをひとつの軸にして、農家以外の人とも繋がれたらと思っています。

杵塚さんが感じる農業の魅力はなんですか?


 農業を通じて、「人が人らしく居られる場づくりができる」と感じています。街中に暮らす方々が農業体験イベントに参加すると、疲れた表情は一変し、目を輝かせながら作業をしています。カウンセリングの勉強をしていた私は、「精神的な病は発症してからでは遅く、実は未然に防ぐこともできるのではないか。農業は食べ物を作るだけではなく、人を元気する可能性がある」と気づいたのです。



 さらに、心理学の勉強をしたからカウンセラーになるという固定概念を捨ててみると、「私がアメリカで学んできたことは必ずしも病院、施設で活かす必要はない。これまでの経験を活かし、農業を通じて、人と自然をつなぎたい」と思うようになり、大学卒業と同時に帰国し就農しました。

カウンセリングの先進国と言われるアメリカで勉強して感じたことを教えてください。

 アメリカでは、コミュニティカレッジ(アメリカの2年制大学)へ進学し、2年間一般教養を学びました。その後、4年生大学へ編入し、社会学と心理学を専攻しました。
 留学中に最も衝撃的だったのは、インターンシップ研修をしていた州立病院での出来事です。入院患者は貧困や虐待等、経済的にも社会的にも恵まれない環境で生活してきた方が多く、ストレスにより、指がニコチンで黄色く染まるほど煙草を吸っていたのです。また、その病院は罪を犯した人のための精神病院であったことも要因のひとつかもしれませんが、対話による心理療法はお金と時間がなければ出来ない行為であるため、副作用を伴う投薬治療がほとんどだったのです。
 私は患者さんの話を聞き、時間をかけて社会復帰のサポートをするのがカウンセリングだと思っていたので、いつしか自分の夢に向かって足を進めることを躊躇するようになりました。そんなとき、子どもの頃から1番近くにあった農業の魅力に気づきました。

海外留学を決めたのはなぜですか?


 私は高校時代、進学校と呼ばれる学校に在籍していましたが、受験に重点を置いた学生生活、教育方針に嫌気を感じており、大学進学に対しても気が進みませんでした。そのような中でも英語が好きで、両親の理解もあり、海外留学という進路を選択しました。
 留学先をアメリカに決めたのは、「色々な人種の方と出会いたい」、「多様な文化に触れたい」という思いによるものでした。

地元を離れてみて、気づいたことはありましたか?



 「自然が豊か」、「食べ物が美味しい」、「四季がある」、「人のつながりが濃い」等、地域の良い部分を再確認できました。一度は実家を、そして静岡県を離れてみたかった私ですが、留学は自分の生き方を見直すきっかけにもなりました。
 地元は駅から車で15分と、決して不便とは言えない場所にも関わらず、60名いる同級生の大半が地元を離れているのは、「何を大事にしたいか」、「どこで生きていきたいか」といった、個々の価値観によるものだと思います。私自身、高校時代に家業を将来的な選択肢として考えたことはなく、留学をしていなければ、今おそらく違う何かをしていただろうと思います。

これからの夢はありますか?


 私は今、農業を始めて11年になりますが、年々、地域の高齢化は加速しています。農業を営む人の多くは7,80代であり、耕作放棄地も増えています。一方で若者の多くは地元を離れ、同級生で農業に携わっているのは私ひとりです。そのため、「先人の知識、ノウハウ、知恵を受け継ぎ、地域をどう守っていくか」が地域の課題であり、自分にとっての課題にもなっています。
 地域に根差した農業、そこから生まれた文化等、今あるものが失われるのは悲しいことです。荒れた畑は労力をかければ再生できても、失われた知識は取り戻せません。日本が画一的な社会とならないためにも、地域の魅力を楽しみながら維持していく方法を考えています。

【Off Time】 外の空気を吸う。

気分転換の方法を教えてください。



 家が仕事場なので、自宅に居ると四六時中仕事のことを考えてしまいます。そのためリフレッシュをしたいときにはとにかく遠くへ行きます(笑)
 繁忙期は連日慌ただしい日が続きますが、農閑期を利用して海外へ旅行したり、本を読んだりすることも趣味にしています。

リフレッシュできるお気に入りスポットを教えてください。

 「れんげじオーガニックマーケット」という、毎月第3日曜日に藤枝市の蓮華寺池公園で開催されているイベントです。生産者と消費者が直接話をして、農作物等を買うことができ、私にとっては楽しみながら気分転換ができる場です。お客さんだけでなく、他のもの作りをしている人にも出会うことができ、「こういう場所がほしかった」と感じています。想いのこもった、ものづくりをする人々が集まり、一緒に地域の豊かさと魅力を発信できる場所です。


【蓮華寺池公園】 藤枝市若王子474-1

◆ ◇ ◆ 輝く女性のお気に入りスポット ◆ ◇ ◆

最後に、このページをご覧になっている女性にメッセージをお願いします。

 人は誰しも、失敗も挫折もします。これからどうしようと悩むこともあります。しかし、大切にしたいものは常に変わらないのではないでしょうか。
 まずは自分の心と身体で感じたことを信じて一生懸命取組み、疑問に感じたことはよく考え、楽しいことは続ける。私はこのやり方を基本とすることで、自分の道が開けてくると思っています。
 今の社会は、皆、何かしらを抱え、生きづらい世の中だからこそ、人は自然の中にいることで大切なものを身体で感じられると信じ、これからも人と人、人と自然を繋いでいきたいと思っています。

My First Step ~私に人生の新たな一歩を与えてくれた人~

 です。
 父は39年前から無農薬にこだわったお茶を生産しており、私の考え方の根本は父がベースになっています。今でこそオーガニック、有機という考え方に注目が集まっているものの、それ以前から自分の信念を貫き、地域で仲間を作りながら地域に根差した取組みをしてきた父の影響は大きいです。父の動きを見て、感じて、さらには考え方を引き継ぎながら、今の状況に合ったやり方を取り入れていきたいと思っています。

プロフィール

杵塚 歩(きねづか あゆみ)

静岡県藤枝市生まれ。
学生時代から英語が好きだった杵塚さんは、「多様な文化、人種に触れたい」という思いを持って、アメリカ留学を決意する。
一度はカウンセラーを目指すも、家業(農業)を通じて人の心を元気にすることへの可能性を感じ、大学卒業後に農業を始める。現在は人と農業、人と自然をつなごうと、地域に働き掛けている。

HPはこちら。 人と農・自然をつなぐ会

次回の輝く女性は・・・

カーコスキー朱美さんを予定しています。

弟の看病がきっかけで小学生のときに看護師になることを決めた朱美さんは、高校時代に難民問題への関心を持ち、19歳からアジアを中心に、世界を旅していました。40歳のときに乳がんとなり、それ以降は助産師としてお産を介助する傍ら、ブログ「月あかりの産屋」等を通じて、「いのちの大切さ」を伝えている朱美さんの日常に迫ります。

今回の取材スポット

やまびこスペース

杵塚さんが働く、「人と農・自然をつなぐ会」がイベント、交流会等を開催するスペースです。
イベントではお茶摘み、紅茶作り、田植え、稲刈り、味噌作り等の農業体験に加えて、参加者同士が交流したり、郷土料理を食べたり、楽しいひとときを過ごすことができます。

住所 静岡県藤枝市滝沢1417
イベント情報はこちら