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ふるさとトピックス

Step By Step vol.47

一筆三礼の気持ちで筆を持つ

『絵を見た人に元気になってもらいたい』


 幼い頃から【絵画】に触れてきた森谷さん。大学時代より日本画を専攻し、奉納絵画の道を志すようになりました。現在は、自身の作品を寺社・教会に奉納しています。また、創作活動とは別に、高校やカルチャー教室で美術を教える講師としても活動しています。今回は、森谷さんの創作活動についてお話を伺いました。

【On Time】絵を見た人に元気になってもらいたい

絵を描くようになったきっかけを教えてください

 幼い頃から絵本が大好きで、幼稚園で配られていた月刊の絵本冊子を夢中になって読んでいました。絵本に触れることで、自分でも絵を描きたいと思うようになりました。
 絵を描く私を、両親が優しく見守ってくれていたことも、絵を描くことが好きになったきっかけのように思います。母が嬉しそうに「あっこちゃん(私)の絵を見ると元気になれるよ。」と声をかけてくれたこと、私が描いた絵を大事に飾ってくれていたことを、今でもよく覚えています。
 今でも、両親は私の絵を楽しみに待ってくれています。絵を描くことを両親が喜んでくれたことが、今の私に繋がっているのだと思います。

いつから、本格的に絵の道に進もうと思ったのですか?

 大学進学を機に、日本画を主に勉強するようになりました。
 高校時代の担任であり、美術部の顧問でもあった先生に大変お世話になりました。私の恩師です。その先生が日本画を専攻されていたことから、私も日本画を勉強したいと考えるようになりました。
 地元である磐田市には、当時、美術の研究所が無く、本格的に美術の勉強をするとなると静岡を出て大学に進学する道を選ぶほかありませんでした。先生に親身になって美術を教えていただき、日本画を専門に学べるコースがある筑波大学に進学することができました。
 大学で様々な美術に触れ、勉強したことで「祈りを捧げる場に置いていただけるような絵を描いていきたい。」と、奉納絵画を志すようになりました。

特に思い入れのある作品はありますか?

 大学在学中に富嶽文化賞展(現・富嶽ビエンナーレ)で準大賞をいただいた作品です。「うずまき」をモチーフにした作品であり、以降「うずまき」に関する絵を描き続けています。
 「うごめくもの」にどうしようもなく惹かれ、青雲の渦や滝壺、けむりや台風の図などを自分の表現で具現化したいと思うようになり、それを絵にしたものが「うずまき」です。
私が描いた「うずまき」をモチーフとした作品は数多くありますが、どれ一つとして同じものはありません。絵の具の素材を変えてみたり、色合いを変えてみたり、渦巻きの中に花を添えてみたり…様々な挑戦をしています。
 「うずまき」は私が生涯描き続けるテーマなのだと思います。

創作の際に心掛けていることは何ですか?

 「次は何を描こうか」と考えて創作するのではなく、ひらめきを大切にしています。私の場合、ふとした時に絵のイメージがひらめきます。そして、そのひらめきを具現化すべく、筆を動かします。
 ひらめきから生まれた理想像と完成品のギャップを無くしたい、不完全なものを世に出したくない、雑念を入れることなく集中し作品に向き合いたい…そんな風に気持ちをこめて作品を作り上げています。
 出来上がった作品を見返すと、その作品に向き合っていた当時の気持ちを鮮明に思い出せるほど、一枚一枚に気持ちがこもっています。
 古の仏師たちは仏を彫る際、「一刀三礼」の心で仏と向き合うと学び、その志に憧れました。私も「一筆三礼」の気持ちで一筆一筆を大切に、祈りを描きこむべく、筆を動かしたいと思っています。

【Off Time】優しい気持ちになれる時間

家族について教えてください

 夫と子供が二人、また、私の両親と二世帯住宅で暮らしています。子供たちは、今は親元を離れて大学に通っています。今まで手がかかっていた分、家に子供たちがいないことを寂しく感じるのですが、その分、電話での会話をとても楽しみにしています。

創作と家庭の両立について

 まずは家庭が土台にあって、創作は家庭のことができてからです。今までも、細切れの時間をつなぎ合わせて創作を続けてきました。
 今でこそ育児の時間は無くなりましたが、子供が小さかった頃は創作にあてる時間がなかなか取れずにいました。完成まで、15年もの歳月がかかった作品もあります。
 それでも、展示会の開催が近づき忙しくなってくると、どうしても創作に時間を割かざるを得ません。そんなとき、何も言わずに見守ってくれていた家族には、心から有難いと思っています。

気分転換の方法を教えてください

 お花が大好きで、毎年、桜の季節にはお気に入りの場所を巡り、その年の桜の様子を観察したりスケッチをしたりと、お花を見ることで、とても幸せな気持ちになれます。
 他にも、一緒に暮らしているボーダーコリーのマリーちゃんと遊んだり、流れる雲を観察したり…忙しない日常の中の、ゆったりとした時間が大好きです。
 今は特に豆乳甘酒に凝っていて、甘酒の優しい甘みに癒される日々です。

これからどのような作品を作っていきたいですか?

 先ほどもお伝えしました通り、次に描くものを考えて決めるのではなく、ひらめきに忠実に向き合い、「一筆三礼」の気持ちで創作を続けていきたいと思っています。
 そして、両親が私の絵を見て元気になると言ってくれるように、絵を見てくださった方に元気になってもらえるような、笑顔になれるような、ホッとしてもらえるような、そんな作品を世に送り出していきたいと考えています。

プロフィール

森谷 明子(もりや あきこ)

磐田市出身
静岡市在住 日本画家
筑波大学大学院 芸術研究科日本画分野修了
大学在学中に富嶽文化賞展 準大賞受賞、春季創画展入選

今までに、駿河国総社静岡浅間神社や大用山来迎院などに自身の作品を奉納している。

創作以外にも、静岡市内の高校やカルチャー教室で講師として活動。
生徒たちに美術の楽しさを伝えている。

2014年より静岡新聞文化芸術面に「ジャポニスムふたたび」を寄稿、現在も連載中。
2015年に絵本の制作から販売までを行う「牧羊舎」を立ち上げ、絵本の出版なども行う。

取材日 H30.7.31